取組企業へのインタビュー

プチ旅行や交換日記。背伸びしない等身大のコミュニケーション施策で、中間層メンバーの自発性を高め、売上も昨年比190.2%。

新潟市中央区で、ネイル&アイラッシュサロンを営むアヴィ。創立から12年を迎えたタイミングで、より会社の幹を太くしていきたいという思いから、新潟市の社員幸福度向上応援事業のモデル企業に応募。中間層のスタッフの育成を兼ねて、社内のコミュニケーション向上のためのアクションを実施しました。

背伸びしすぎない等身大の取り組みの内容や、その後の変化について同社代表の兼平朋美(かねひら・ともみ)さん(写真右)と、店舗統括マネージャーの渡辺沙紀(わたなべ・さき)さん(写真左)にお話を伺いました。

「ただ仕事をするだけ」では物足りなかった

今回、この社員幸福度向上応援事業に応募された背景を伺いたいのですが、もともと「幸福経営」というのはご存知でしたか?

兼平さん:お話を聞くまでは詳しくは知らなくて、その名のとおり社員の幸福度が高まるような経営スタイルや施策があるのかな、という程度の認識だったんです。でも何だか良さそうだよね、という話はしていました。

実際に応募に至ったのは、会社の中で何か解決すべき課題があったのでしょうか?

兼平さん:特別大きな悩みや課題があるわけではなかったのですが、さらに良くなる伸び代はあると感じていたんです。経営や組織づくりって何が正解かわからないじゃないですか。だからこそ、新しい取り組みにチャレンジしていくことが必要なのかなと。

もともと、今後を見据えたときに、組織をきちんとつくって会社の幹をさらに太くしていきたいとは思っていました。人間関係が悪いわけではないし、みんなこの仕事が好きで働いているけれど、良くも悪くもただ仕事をしているだけというか。それが正直、私は物足りないなと感じていたんです。

そういった部分も含めて、会社や自分自身の未来を自発的に考えて行動できる社員が中間層を中心に増えていけば、成果を出し続けられる組織になるのかもしれないなと思って、そのきっかけを得られたらと応募しました。

渡辺さん:私も最初はあまりイメージが湧かなかったのですが、取り組みを通して会社が良くなればいいなという感じでしたね。兼平さんと私の間ではコミュニケーションは取れているけれど、若手の子たちとは年も離れているぶん、意見が言えていないこともあるのかなと感じていたので、良い機会だなと思いました。

育成も兼ねて、中間層メンバーからリーダーを選出

アクションを決めていくにあたって、まず始めに全社員でワークショップを行なったと伺いました。

渡辺さん:はい。コーディネーターの方の提案で、ファッション誌を切り抜くコラージュワークをしました。全社員で3つのグループに分かれて、それぞれアヴィの「現状の姿」と「理想の姿」をイメージしたコラージュを作成し、その意図を発表しあったんです。

斬新で面白い手法ですね。

写真:兼平朋美さん

兼平さん:それぞれに個性が出るのはいいけれど、3つのチームがあまりにもかけ離れたものを作っていたら、みんなの向いているベクトルが違うってことになりますよね。このワークでは、そのブレを可視化する意図があったのかなと思います。
でもだいたいみんな、似たような感じに仕上がってましたね。

渡辺さん:雰囲気は違っても、芯の部分は一緒でしたよね。どんな会社にしていきたいかを一人ひとりが考えるいい機会だったなと思います。

兼平さん:私たちは普段お客様の接客をしているので、毎日顔を合わせていてもゆっくり話すことって意外とないんですよね。定休日もないですし、店舗を閉めて全員が集まることがそもそも一度もなかった。今回のように営業を停止するのって一見生産性が悪いように感じるけれど、長期的に見たらすごく大事なんじゃないかなと思っていたので、やってよかったですね。

私自身も、ワークショップを通して「アヴィはどんなお店なのか」を明確にして、みんなが共通の認識を持っておくことはとても重要だなと気づきました。

そこから具体的なアクションに落とし込むのが難しそうですが、どのように進めていったのでしょうか。

兼平さん:コーディネーターの方とも相談した結果、渡辺さんともう一人の店長と一緒に各店舗から中間層で適任だと思うメンバーを3名選んで、彼女たち中心に進めてもらうようにしました。

今まではミーティングを開催するときにも私がリーダーとして取り仕切っていましたが、そうすると「勉強になった」というスタッフは多いけれど、どうしても受け身になってしまうのかなと思っていて。でもかといって「何したい?」と聞いたとしても、何が課題かがわからないから「うーん」となってしまう。

今回は1年間の取り組みですし、「ワークショップが楽しかった」で終わってしまったら意味がないので、良い機会だと思って今回はあえて私は入らず、彼女たちにお任せしました。

中間層メンバーの育成の機会でもあったんですね。改めて、どんな取り組みをしたのか教えてください。

兼平さん:彼女たちが考えてくれたのが、まずは社内イベントの開催ですね。最初のワークショップがとても有意義だったので、サロンワーク以外でもみんなで同じ体験をしたら、よりコミュニケーションが円滑になるんじゃないか、ということで日帰りプチ旅行でガラスアート体験などをしました。

それに加えて、Instagramでお客様向けに発信する店舗アカウントとは別に、社内のコミュニケーションを目的としたアカウントを新たに作りました。プライベートなど何気ない様子を投稿をして、自由にコメントし合うアイデアだったのですが、発信者がなかなか手応えを感じられないということで、次のアクションとして交換日記を始めました。

手書きで文字を書いて回していく、あの交換日記ですか?

兼平さん:そうですね、このご時世だからこそあえてアナログがいいねって。2つの店舗でそれぞれ順番にノートを回して、全員がコメントを返していくというものです。小さなノートなのでそこまで負担がないですし、みんなからレスポンスがあるとモチベーションも上がりますよね。

これら3つをやることによって、働く時間も場所も年齢も違うスタッフが、お互いにどんなことを考えているのかを共有していました。

等身大の取り組みで、売上アップも実現

お二人は取り組みを進めていく様子を見守る立場だったわけですが、見ていていかがでしたか?

渡辺さん:苦労している感じは見受けられなくて、私は3人のチームワークがいいなと感じていました。今回はお客様の予約を停止して営業時間内での取り組みでしたが、他のメンバーからも不満はなく、むしろコミュニケーションをどんどん取っていきたいねとポジティブな声が上がっていましたね。

兼平さん:「どうしてるかな?話し合い進んでるかな?」という親心的な心配は常にありましたけど(笑)。やはり経営メンバーが言ったことをやってもらうのではなく、現場のメンバーが自ら考えて実施した等身大の取り組みだったからこそ、負担も少なかったのかなと思います。

背伸びしすぎないというのは、継続においてもきっと大切ですよね。取り組みを経て、変化はありましたか?

写真:渡辺沙紀さん

渡辺:やっぱりみんなが自分の意見を言いやすい雰囲気に変わってきたのか、消極的だったところから、自発的に動く感じになってきているなというのはすごく感じますね。私自身、若手の子たちとは差を感じる部分もあったのですが、コミュニケーションを取る機会が増えたことで、「こんなこと考えていたんだ」と知るきっかけにもなりました。

兼平さん:これまではいつも発言する人が決まっていたけれど、今は私から投げかけなくてもいろんな人から意見が出るようになりましたね。Web広告のチームやキャンペーン施策チームなど、それぞれのグループLINEも活発に動くようになりましたし、気づけばみんなの方がいろんなことに気づいてくれていて、私が見えない部分でもお互いにフォローし合っているのがすごくいいなと思っています。

経営視点でも、何か手応えや効果を感じていますか?

兼平さん:実際に売上が伸びています。やはり本人が良いと思っていないのに、数字を上げるために上がやらせたことって、結局結果が出ないんですよね。逆に、現場にいるスタッフがお客様のニーズを丁寧に拾って、情熱を持って考えた施策には確実に数字が着いてくるし、その子自身にとっても、意見が採用されたことでやりがいや働く意欲の向上に繋がる。すると、またコミュニケーションが自然と活発になっていくし、結果働くことが楽しいと感じる。その循環が、幸福経営なのかなと感じています。

それに、働きやすさとかやりがいって人それぞれだからこそ、まずは自分の強みや好きなこと、何にワクワクするかを知る必要があるなと。メンバー一人ひとりに「どうなりたいか」「今はどこを目指しているのか」を雑談ベースで毎月聞くようにしていたら、すごく効果があったような気がします。

渡辺さん:今まではやはり、みんなただ仕事をしているという部分が大きかったと思うけれど、ネイリストやアイリストとして自分の売りポイントを明確にして動いていけば、実際にお客様を獲得していけますし、そうすると単純に楽しいんですよね。それがわかってきたことで働きがいに繋がって、結果数字にも表れているのかなと私も感じています。

幹を太くし、働き方の多様化に対応できる組織に

良い循環が回り始めているんですね。それでは最後になりますが、「働き方」というテーマについて、今後の展望を教えていただけますか?

兼平さん:わたしたちには「スタッフとお客様、ともに輝けるサロン」というテーマがあって、もちろんお客様をきれいにするのが仕事ですが、スタッフたちが自分らしく生きることもすごく重要だと考えているんです。

うちは女性ばかりの職場なので、環境や立場によって多様化するそれぞれの働き方を、きちんと実現できる組織にしていきたいと思っています。

たしかに、まだまだ女性は出産や子育てなどライフステージによって、働き方が左右されやすい現状があります。

兼平さん:そうですよね。それ以外にも、年齢を重ねたり立場が変わったりすれば、入社当時とやりたいことが変わる可能性も大いにありますよね。そこでもし相談を受けたとしても、会社の規模やお金の問題で対応できない状況であれば、その人は辞めるしか手段がなくなってしまう。

グループを大きくしたいわけではないけれど、そういった働き方の多様化に耐えられるように、幹を太くするためにも、やはりマンパワーってすごく重要だなと。人が増えればその分大変なことも増えるかもしれませんが、上手くいけばすごく良い風が入りますし、うちの強みにもなるなと感じているので、今後はその部分を着実に固めたいなと思っています。

ゆくゆくはさまざまな人にとっての“働きやすい”に対応できるように、基盤をきちんとつくっていくと。

写真:兼平朋美さん(左)、渡辺沙紀さん(右)

渡辺さん:私自身、今もすでに働きやすいと感じているので、ここからさらに人が増えても、みんなが楽しく働ける会社であったらいいなと思っています。

兼平さん:誰にだって体調不良になることはあるので、誰かが休んでも周りでフォローし合えるくらいの規模ではやっていきたいですよね。

とはいえまた世の中ががらっと変わる可能性もあるし、手広くしていくのが正解かもわからないので、先のことはあまり決め過ぎずに、イメージを持つのは2年後くらいまで。もうすぐ新しい店舗が本店の近くにできるのですが、これからも大事にしていることはぶらさずに、でも小さな変化は楽しみながらどんどん起こしていこうと思います。

企業情報

株式会社アヴィ

平成21年創業。ネイル・まつ毛・眉毛の同時施術が可能なネイルサロン。新潟市中央区の本店のほか、万代ビルボードプレイスにも店舗を構える。また、9月8日に女池にジェルネイル専門店、10月1日にはアイブロウ専門店もOPENし、現在合計4店舗を運営。ケアに力を入れており、現在は深爪矯正や自爪育成、美肌脱毛など幅広いメニューを展開。ネイリストやアイリスト合わせて15名の女性が活躍中。

https://nail-avi.com/