取組企業へのインタビュー

日々の感謝が、建設業界で一番大切な「安全」に繋がる。
挨拶から始める職場コミュニケーション改善。

新潟市東区で電気設備、情報通信設備、環境ソリューションの3つの事業を展開する株式会社興和電気。

やりがいのある職場づくりを目指し、新潟市の社員幸福度向上応援事業のモデル企業として、社内の人間関係の構築やコミュニケーションの向上に取り組みました。

全社的な働き方改革に取り組んだ背景にはどのような思いがあったのか、同社代表の石黒毅(いしぐろ・たけし)さん(写真左)、人事担当社員の木村由美(きむら・ゆみ)さん(写真右)にお話を伺いました。

安全担保にはコミュニケーションが不可欠

社員の幸福度向上や、働き方改革に関する取り組みを始めたきっかけを教えてください。

写真:石黒毅さん

石黒さん:我々は建設業ですから、安全第一でなければいけません。ところが、普段からコミュニケーションを気軽にとれる人間関係が構築されていなければ、何か気付きがあったときにも共有されず、結果的に安全を担保することができないですよね。

たとえば、誰かが危ないことをやっているのを見かけても、「まあ言わなくていいや」となってしまう。そういったことを無くさなければならないと思ったのが、最初のきっかけです。

元々コミュニケーションの課題を感じていたのでしょうか。

石黒さん:そうですね。私たち経営層が思っている以上に、現場メンバーの関係性の構築がまだまだ不十分であることが、声として聞こえてくるようになったんです。もちろんプライベートの関係にまで踏み込むことはしませんが、仕事をする上ではやはり、きちんと言い合える関係性をつくることが必要だなと。

木村さん:私も人事の仕事をやっているなかで、若い世代が退職するたびに会社の課題について考えていて。できればここでキャリアを積んでもらいたいし、みんなが同じ方向を向いて仲良くやれたら一番いいのになと思っていたんです。だから今回、本腰を入れて取り組むのはいい機会だなと感じました。

当たり前のことを、当たり前に

ワークショップを通じて、コミュニケーション向上のアクションを決めたと伺いました。 具体的にはどんな取り組みをしたのでしょうか。

石黒さん:まずは、コーディネーターの方に提案いただきながら、40代以下の若手・中堅社員を対象にしたワークショップを2回行いました。カードやレゴブロックを使って理想の会社像を描いたり、自身の価値観を探ったりするんです。「あなたが幸せだと思うものをレゴで表現してみてください」とか「あなたの幸せを阻害してる要因があればそれを表してください」とか。

木村さん:個人とグループ、それぞれで価値観を見つめ直した上で、会社がよりよくなるために大事なことを洗い出しました。そのなかで最終的に選ばれたのが「健康」と「感謝」。それにはまず挨拶から、ということで「あいさつ運動」を始めました。

最終的にはとてもシンプルな取り組みに落とし込まれたんですね。

石黒さん:はい。うちにはさまざまな環境で育ってきた社員が集まっていて、挨拶のような一見当たり前のことも徹底できていない状況だったんです。結局、当たり前のことを当たり前にやることが一番大事だと思うので、「ありがとう」や「お疲れさま」といった挨拶から始めることにしました。

木村さん:具体的には、LINE WORKS(※)のアンケート機能を使って、現状の挨拶にまつわる社内アンケートを取りました。その結果から、みんなが気持ちよく挨拶できる環境にするにはどうしたらいいかを考えて、今月の標語として会社入り口に貼り出しました。 ※企業向けのクラウド型ビジネスチャットツール

挨拶上手は付き合い上手
言ってみよう自分から
伝えてみよう感謝の気持ち

石黒さん:他には、会社の理解を深めてもらうために、現場の様子を記事にまとめて社内で発信しました。うちは少人数の会社ですが、さまざまな種類の仕事があって、お互いにやっていることを意外と知らないんです。そこで、木村が現場社員にインタビューをして、それぞれの携わっている仕事や思いについてまとめてくれました。

木村さん:その内容は、月に一度開催している「安全衛生委員会」で社員に紹介しました。実際にインタビューしてみると、仕事に対するみんなの意外な思いを知ることができて面白かったですね。

“やらされ感”を払拭し、やりがいのある職場へ

そういった改善の取り組みは、社内でどのように進めていったのでしょうか?

木村さん:具体的なアクションが決まってからは、社内で新しく立ち上げた「コミュニケーション向上委員会」を中心に進めていました。ワークショップ時の様子から、リーダーに向いていそうなメンバーを選んで編成したチームですね。そこに社長や私も加わって議論を交わしつつ、企画を考えて実施していました。

具体的なアクションを進めていくなかで、苦労した点があれば教えてください。

木村さん:最初の頃は、アンケートをとってもなかなか回答率が伸びなかったり、「本当にきちんと考えて回答したのかな?」という人もいたりしました(笑)。「幸福経営」という名前に馴染みがなく、抵抗を持つ人もいましたね。

石黒さん:世の中で知られていてたとしても、地方の中小企業で働く社員にはなかなか情報が入ってこないんですよね。うちも、通常の業務以外にこうした取り組みをすること自体、初めてだったんです。だから面倒だなと感じる社員もいたと思うけれど、結局は従業員みんなのことを考えた取り組みですからね。逆に言えば、「会社は従業員の幸福をきちんと考えているんだよ」という意思を示す機会になったと思います。

今回の取り組みを通して、社内での変化や手応えは感じていますか?

写真:木村由美さん

木村さん:コミュニケーション向上委員会のリーダーと私たちとで「こうしたらいいんじゃないか」と議論を交わせたのはよかったですね。たまにぶつかることもありましたけど、それは率直に意見を言い合えるようになったということなので、これが大事なのかなって。

石黒さん:もちろんまだまだ途中段階ですが、まず第一ステップは踏み出せたと感じています。コミュニケーションしやすい素地ができたというか。この間、今年の春に中途入社した方と話していたら「すごくやりがいを感じています」と言ってもらえて。“やらされ感”ではなく、やりがいを持って仕事に取り組める環境に少しずつなってきているのかなと。

木村さん:人が出入りするときにも、社員同士で「お疲れさま」と自然に声を掛け合うようになりましたしね。そういえばこの間、数年ぶりにイベントをやったんです。くじ引きでチームを決めてボーリングをしたら意外と盛り上がりました。ストライクが出るとハイタッチしたりして(笑)。

ボーリングだと全世代共通で楽しめますし、自然とコミュニケーションが生まれそうですね。

石黒さん:その後の懇親会も、そのチームごとにばらばらの店に行ったんです。僕のチームには新卒社員もいて、いつもと違う会話ができてよかったですね。やはり、普段から何気ない話ができるかどうかって大事だなと改めて思いました。そういったところから、人となりがわかりますから。

木村:イベントの企画やチーム編成なども、コミュニケーション向上委員会のメンバーがすごく考えてくれたんですよ。小さなことでも、そうやって主体的にやってくれるようになったのはすごくいいですよね。

背伸びしすぎず、一つひとつできることを

コミュニケーション向上委員会として、何か新しい取り組みは考えていますか?

石黒さん:新型コロナウイルスの感染状況を見つつですが、研修旅行と称して少人数の旅行ができたらいいよねと話していました。たとえば、予算内で1泊2日の旅行を自分たちでプランニングするという形にすれば、それがまたコミュニケーションの機会にもなりますしね。

面白そうですね。最後になりますが、「働き方」に関して今後の展望をお聞かせください。

石黒さん:基本的な人材教育は、会社としても仕組み化していかなければなと。それと同時に今回のような取り組みを続けることによって、一人ひとりがより主体的に動ける組織にしていきたいですね。人間的に成長できる環境をつくれれば、結果的に売上や利益にも繋がると信じているので、あまり背伸びせず、今の僕らにあったやり方でやっていこうと考えています。

木村さん:たとえば誰かが体調を崩したときに、現場にせよ事務にせよ、お互いがカバーし合えるような環境や人間関係をつくりたいですよね。そのためには、やはりお互いについて知るためのコミュニケーションを重ねていきたいと思います。

石黒さん:ただ私と木村も含めて、本来の業務が忙しくなるとどうしても活動が停滞してしまうのは、今後の課題だなとも感じています。だからこそ、きちんとメリハリを付けながら続けていきたいですね。

企業情報

株式会社 興和電気

昭和59年創業。電気設備、情報通信設備工事、環境ソリューションの3つの柱で事業展開をしている。現在、臨時職員も含めて25名在籍。家庭用の電気設備から、防災に関わるインフラ設備まで幅広く請け負っている。

https://kd-kowa.co.jp/