取組企業へのインタビュー

スタッフの「やりがい」「成長」を引き出すための多角的経営。なにがあってもスタッフの「食いっぱぐれない」人を育てる。

新潟市中央区と三条市に事務所を構えるL&Bヨシダ税理士法人。「有給取得率100%」「繁忙期以外の残業カット」を目標に掲げ、2022年の有給休暇取得率は、新潟オフィス84.5%、三条オフィス84.6%、時間外労働の月平均は新潟オフィス4時間、三条オフィス43分と高い水準を実現させました。さらに、「転勤なし」「多様な特別休暇の導入」「子育てのためのテレワーク」など数々の取り組みを実行。それらの取り組みが評価され、令和4年度「新潟市働きやすい職場づくり推進賞優秀賞」にも選ばれました。

とくに力を入れているのが「やりがい・成長」のある職場づくり。具体的な取り組み内容や、背景にある思いについて、代表税理士の吉田雅一(よしだ・まさかず)さん(写真左)、人事課長の吉田晶子(よしだ・あきこ)さん(写真右)にお話を伺いました。

スタッフの「やりがい」「成長」のために、難易度 の高い多角的経営へ

「やりがい・成長」のある職場づくりのために、取り組んでいることを教えてください。

写真:吉田雅一さん

吉田(雅)さん:大きくは「やりたいことに挑戦できるフィールドづくり」「成長のための環境づくり」の2つです。

やりたいことに挑戦できるフィールドづくりとしては、税理士法人としては珍しい多角的なサービス展開に取り組んでいます。一般的な税理士業務の他に、補助金申請業務、融資獲得支援のための業務、経営コンサルティングも提供していて、最近はカフェの経営やM&Aをきっかけとしたチャイの販売も行っています。

税理士法人なのに喫茶店の経営まで...。多角的なサービス展開の狙いが、リスク分散や売上 拡大ではなく「スタッフのやりがいを高めるため」であることに驚きました。

吉田(雅)さん:語弊を恐れずに言うと、税にまつわる業務だけをやっている方がサービス提供者としては楽です。業務に精通していますし、税計算はどの会社にとっても義務なので、依頼がなくなることもありません。それに比べて、たとえば経営コンサルティングはサービスの提供難易度が高く、お客さまから求められる保証もありません。

それでも、スタッフからすると、会計業務しかできない職場より、コンサルティングもできる職場の方がやりがいを感じられる人が多いはずです。なれば、多少経営難易度が上がったとしても、取り組む価値があると考えています。

吉田(晶)さん:私自身、税理士法人のスタッフでありながら、カフェの立ち上げ準備やM&AによるECサイト事業への参入、新卒採用などに携わらせてもらっています。本当に、幅広い業務が経験できる環境です。

「食いっぱぐれない」スキルを身につけてもらうために

「成長のための環境づくり」としてはどんなことに取り組んでいるのでしょうか?

吉田(雅)さん:複数の施策に取り組んでいますが、なかでも、スタッフの資格試験挑戦の後押しには力を入れています。

税理士に限らず、簿記やファイナンシャルプランナーなど業務に関係のある資格の取得は会社として全面的にサポートするようにしていて、試験勉強のための特別休暇の取得や、自習室の開放などを行っています。ワークライフバランスを整えるために始めた残業時間削減も、スタッフの勉強時間を確保することにつながっています。当然、資格取得を果たしたスタッフには昇給も行います。

私自身、働きながら勉強して税理士試験をパスした経験があり、勉強できる環境のありがたさはよくわかっているつもりです。少しでもスキルアップを目指すスタッフの力になれればと思い、環境づくりに取り組んでいます。

写真:吉田晶子さん

吉田(晶)さん:実際に環境づくりに力を入れてから、約6年間で3名の税理士資格取得者が生まれていて、今後もさらに増やしていければと思っています。

「やりがい・成長」のある職場づくりを目指すきっかけは何かあったのでしょうか?

吉田(雅)さん:特別なきっかけがあったわけではなく、私が3代目として税理士登録をした2017年ころから考えていました。背景には、一緒に働いてくれるスタッフが「食いっぱぐれない」ようにしたいという思いがあります。

税理士業界に限らず、どの業種も同じことをただ続けるだけだと、食べていけなくなるときが必ず来ます。我々としても常に生き残るための道を模索し続ける必要があり、場合によっては今のサービスとは全く違う業種・業態へとシフトする可能性もあります。そうなったとき、悲しいですが事務所を離れる決断をするスタッフも、出てくると思うのです。

事務所を離れたスタッフには、転職や起業といった選択肢がありますが、いずれにしろスキルがないとすごく困るはずです。そうならないために、場合によっては、まったく別の業界へ進んだとしても、生きていけるだけの能力を身につけて欲しいと思っています。

働きがいのある環境づくりで、採用競争力を高める

「新潟市働きやすい職場づくり推進賞優秀賞」に選ばれていますが、職場環境について、社内外に発信をし始めたのはいつ頃なのでしょうか?

吉田(雅)さん:2017年頃です。新潟支店を開設するタイミングで、採用に力を入れ始め、とくに若い人に魅力を感じてもらうために職場環境のアピールを始めました。

私が税理士になったころ、税理士の平均年齢は65歳くらいで比較的、高齢化の進んでいる業界でした。そんな業界に若い人たちは魅力を感じづらいだろうと思ったのです。どうすれば弊事務所にエントリーしてもらえるか考えたとき、武器になるのは「働きやすさ」だと考えました。

結果的には、2016年時点では10名ほどだったスタッフの数を、2023年4月の時点で50名まで増やすことができ、新卒の数だけで見ても、5年間で20名もの採用に成功しました。

たった数年で社員数5倍、新しく始めた新卒採用でも結果が出ているのは素晴らしいですね。スタッフの採用は順調だったのでしょうか?

吉田(雅)さん:全然そんなことはありません。最初の1、2年は合同説明会に参加しても誰も話を聞いてくれないような状況でした。それでも、3年目あたりから、働きやすい環境づくりの結果が徐々に出始めて、求職者の方々に数字として語れるようになりました。そのおかげで採用がうまくいくようになったと感じています。

取り組みを初めてから結果が出るまでに、タイムラグがあったのですね。

そうですね。ただ、すぐには結果が出なくても、将来を見越して取り組みを続けることが大事だと思っています。

たとえば残業時間削減の場合、語弊を恐れずに言うと、残業時間が減るだけ経営的には苦しくなります。スタッフの稼働時間が減り、対応できる仕事の数が減るわけですので。

それでも、取り組みを続け、繁忙期を超えたタイミングを見計らって「定時で帰りましょう」「有給もとってください」と社内へのアナウンスを繰り返し実施しました。変化が起こるまでは、とにかく辛抱強く呼びかけを続けましたね。

スタッフのライフステージの変化に合わせた制度づくりを

働きやすい職場づくりについて、今後の展望を教えてください。

吉田(雅)さん:引き続き今の取り組みを加速させ、さらに高い目標を達成できればと考えています。

たとえば残業時間は今、月平均で4時間ですが、これを0にできないかと思っています。税理士業務はどうしても確定申告の前後で忙しくなる傾向があり、業務の平準化は難しいですが、なんとかやれる方法を見つけ出すためにも、目標を掲げて取り組み続けることが大事だと考えています。もちろん、社員の成長できる環境づくりにも、引き続き力を入れていきたいです。

吉田(晶)さん:個人的には、子育てしやすい環境もさらに整えていきたいです。現在、スタッフの平均年齢は 新潟オフィス28.8歳、三条オフィス40.5歳(2022年7月時点)で、結婚、出産とライフステージの変化を迎える人も多く、そんなスタッフたちが、さらにやりがいを持って業務に取り組むために必要だと思うのです。具体的には、 この5月から結婚前や出産立ち合いのための特別休暇を増やし、対象者の取得実績も100%です。 今後さらに、子育てしやすい制度を検討していきたいと思っています。

吉田(雅)さん:確かに、ライフステージの変化に合わせた制度づくりは必須だと思います。制度がうまく機能するように、業務の属人性を排除して、気兼ねなく休みを取れる環境づくりも大事だと思っています。職場を離れることも、戻ってくることも無理なくスムーズにできる環境が理想ですね。そのためにも、引き続き採用に力を入れ、業務改善を進めていきます。

法人情報

L&Bヨシダ税理士法人

1965年創業。新潟市三条市と新潟市に事務所を構える税理士法人。確定申告・法人決算、税務顧問、給与計算、記帳代行といった一般的な税務業務のほかに、融資による資金調達やクラウドソフト導入のサポートも行う。また、コンサルティングサービスとして経営計画からマーケティング、人事など幅広いサポートにも対応。三条オフィス21名、新潟オフィス35名の計56名 スタッフが在籍中(2023年8月時点)。