取組企業へのインタビュー

会社の本気を社長が示す。働き方改革の加速で、社員に誇りをもたらす

新潟市東区に本社を構える旭カーボン株式会社は長年、社員の働きやすい職場づくりに取り組んでいました。「働き方改革の推進」を社⻑方針に組み込んでからは取り組みが加速。残業時間削減、有給取得率増加、低水準の離職率など、数々の成果をあげ、令和4年度「働きやすい職場づくり推進企業表彰市長賞」も受賞しています。

どのようにして働き方改革を加速させたのか。代表取締役社長の吉田浩(よしだ・ひろし)さんに伺いました。

社員一人ひとりが、もっと魅力を語れる会社へ

2021年に吉田さんが代表取締役社長に就任してから、働き方改革推進が積極的に進められています。その背景には何があるのでしょうか?

吉田さん:社員一人ひとりに、もっと自社を自慢に思ってほしいという思いがあります。

私は社長就任後、30名ほどの管理とフリーディスカッションを行いました。これから会社をどうしていきたいのか、どんな悩みを抱えているのか、1対1でフランクに話を聞いて回ったのです。ディスカッションを通して一番気になったのは社員一人ひとりが、将来への不安からか、やや遠慮がちになっていたことです。語弊を恐れずに言うと、少し元気がないのかなと感じました。

旭カーボンは長年にわたって技術を磨き、社会になくてはならない製品をたくさんつくってきた会社です。そんな素晴らしい会社の社員たちが、もっと自社を誇りに思い、会社の魅力を周りに発信できる手助けがしたいと強く感じました。

そこで、まず手をつけたのは長年変わっていなかった経営理念の更新でした。創業以来脈々と受け継がれてきた社是は残しつつ、存在理由、ビジョン、価値観・コミットメントを見直しました。

 

引用:旭カーボン株式会社 会社情報 企業理念・経営理念・経営方針

 

写真:吉田浩さん

経営理念のリニューアルは半年ほどかけて、全社員参加型で進めました。具体的な文言の選定は、各部署の代表者に集まってもらって進めましたが、そのプロセスで社員一人ひとりに「自分たちのありたい姿」について考えてもらう機会をつくったのです。

リニューアル後はコーポレートサイトのリニューアルも進め、社外への発信に力を入れ始めました。また、理念通りの会社かどうか、第三者に評価してもらうため、働き方関連の賞への応募も積極的におこないました。それに合わせて、これまでも取り組んでいた働き方改革に、ますます力を入れるようになったのです。

会社の本気を社員に示す

働きかた改革としては、具体的に何に取り組んだのでしょうか?

吉田さん:有給休暇取得促進、ノー残業デーの制定、テレワーク、フレックス制の導入などです。

実はどれも私が社長に就任する前から、取り組まれていました。ただ人事労務課だけが頑張っていて、他の部署はどこか「人ごと」になってしまっていて、せっかくの取り組みが全社に浸透していない状態でした。そこで、大きく2つのことを行いました。

まず1つ目は、重点的な取り組みの一つとして、働き方改革の推進を「社長方針」として掲げたことです。ただなんとなく取り組むのではなく、目標達成のために本気で取り組むものだという姿勢を、まずは伝えたいと思ったのです。

2つ目は、「働き方改革推進課」をつくり、兼業ではなく専任の社員を配属したことです。人事労務課が兼任する、これまでのスタイルだと他の仕事が忙しく、取り組みが滞りがちになる可能性があると思ったのです。また、新しい部署にすることで、既存の部署には縛られず、部署横断型でさまざまな施策を推進してもらいたい狙いもありました。

働き方改革への努力が、社員の誇りにつながる

確かに、そこまでやると会社の本気度が社員に伝わりそうです。新部署「働き方改革推進課」はどんな取り組みを実施したのでしょうか?

吉田さん:何か特別なことをしたと言うよりは、地道な取り組みをコツコツ続けたのだと感じています。

例えば、有給休暇取得促進であれば、会社のカレンダーへの有給休暇取得奨励日の明記、有給休暇取得率の推移を経営会議で報告、取得強化月間の制定、管理職に所属員取得状況を毎月共有してもらう、など細かいアクションを徹底しておこないました。

とくに管理にとって部下の有給取得状況を把握し、目標に満たなければ取得できるように調整する、といった管理は大変だったと思います。とくに有給取得のような働き方に関する取り組みは、日々の仕事が忙しいなか、ついつい優先度を下げてしまいがちです。それでも、会社が本気で取り組んでいることだから、社員みんなで取り組むと決めたのだから、しっかりやろうよと呼びかけながら進めてもらいました。

会社が永続的に発展し続ける土台をつくりたい

数々の取り組みの結果が、残業時間削減、有給取得率増加などの数字に現れていると思います。取り組み開始当初に考えていた「社員がもっと会社を自慢できるように」については、何 か変化を感じますか?

吉田さん:まだ道半ばではありますが、少しずつ、社員が会社に対して誇りを持ってくれるようになっているのかなと感じます。

その背景には、ありがたいことに、旭カーボンという会社の認知度が上がってきていることがあると思っています。たとえば、中途社員に飲みの席で「どうしてウチに入ってくれたの?」と聞いたとき「ホームページを見て、人に優しい会社なんだと思って」と言われました。

また、お付き合いのある企業や教育機関の方々から「あの賞をとっていましたね」「新聞に載っていましたね」と声をかけられる機会も増え、我々の取り組みが少しずつ、ご近所の方々に理解いただけるようになってきていると感じます。

最後に、今後の展望を教えてください。

吉田さん:今後も、今回いただいた「働きやすい職場づくり推進企業表彰市長賞」のような賞の獲得にチャレンジしたいと思っています。賞をいただくことで客観的な評価を可視化できますし、取り組み続ける理由にもなります。

賞の獲得自体は目的ではありません。獲得するための努力を全社でし続けること、そして、その努力を社外の人たちに認めてもらうことに意味があると思っています。地域の方々を含め、社外の人たちにもっと認めてもらうことで、社員の喜びは大きくなり、自社への誇りも強くなると思っています。

これからも、社員の誇りと、旭カーボンで働きたいと思ってくれる人を増やすために、働き方改革に取り組み続けます。いつの日か、今の取り組みが、我々の次の世代に受け継がれるとうれしいです。

会社が永続的に発展し続けるための土台づくりこそ、私や働き方改革推進課の使命だと思っています。そのために必要な取り組みを今後も続けていきたいです。

企業情報

旭カーボン株式会社

1951年創業。本社の他に複数の事業所を構え、カーボンブラック製品の開発、製造、販売を行う。1998年株式会社ブリヂストンの連結子会社となる。従業員数は156名(令和4年12月時点)。