取組企業へのインタビュー

創業50年の老舗企業の挑戦。社員の健康を守り、いつまでも楽しく働ける職場をつくる

新潟市にて、自動車部品の卸売業を営む三ツ葉パーツ。1972年創業の老舗企業でありながら、時代の流れに合わせた職場環境づくりに取り組み、令和4年度「働きやすい職場づくり推進企業表彰推進賞・新潟経済同友会特別表彰」を受賞しています。どのようにして働きやすい職場づくりを実現させたのか。取締役の泉真紀 (いずみ・まき)さんに伺いました。

障がい者雇用、社員の健康づくり増進に注力

働きやすい職場づくりに関する取り組みについて教えてください。

泉さん:多くの取り組みをおこなっていますが、大きくわけると「障がいのある方の活躍促進」「健康づくりの推進」の2種類です。

障がいのある方の活躍促進のための取り組みとしては、聴覚障がい者向けアプリの活用、生活上での困りごと相談の請負、必要があればプライベート充実のために市役所相談・弁護士相談・手続きなどの援助もおこなっています。ジョブコーチだけでなく、ライフコーチとしてもサポートし、全面的に応援しているつもりです。

健康づくりの推進のための取り組みとしては、健康診断の実施と合わせて健康サポートプログラムアプリの導入を推奨しています。アプリでは、健康診断の進捗の可視化、万歩計、カロリー計算などが可能です。導入は任意ですがこのアプリを通じて、将来の健康リスクを予測し、従業員が健康に気を配るきっかけにしてもらえればと考えています。また、保健師による健康電話相談や、健康診断で注意が必要な従業員への個別指導も実施しています。

「障がいのある方の活躍促進」「健康づくりの推進」以外にも、リフレッシュのための宿泊旅行割引やレジャー割引、男性社員の育休取得推奨など、働きやすい職場づくりにつながる取り組みを幅広くおこなっています。

自身の病気をきっかけに、社員の健康予防に注力するように

取り組みを始めたきっかけを教えてください。

泉さん:障がいのある方の活躍促進については、本当に偶然でした。

2018年ごろ、法定雇用率達成のために勉強をはじめたタイミングでたまたま、聴覚障がいの方から入社希望をもらったのです。

まずはトライアル雇用からはじめ、パートタイム、契約社員を経て2023年より正社員として働いてもらっています。ずっと見守ってきましたが本当に働きぶりの良い方で、短期で契約終了するのがもったいなく、もっと仕事をお任せしたいと考え、ステップアップしたかたちです。

健康づくり推進をはじめたきっかけは、2015年に自分が大病を患ったことでした。健康診断で異常が見つかり、再検査をしてみると癌だと発覚しました。幸い、早期発見で治療が可能でしたが、これが放置されていたらと思うと恐ろしいです。そんな経験から、定期的な健康診断や再検査の大切さを痛感し、社員の疾病予防に力をいれるべく健康づくりの取り組みを始めました。

周知徹底とトップダウンの提案が鍵

50年以上歴史のある会社で、新しい考え方を取り入れることは難しいことかと思います。どのようにして社内に浸透させていったのでしょうか。

泉さん:まず始めたのは、周知徹底です。

2ヶ月に一度、各営業所の所長が集まる定例会議にて、新しい取り組みや就業規則の変更点について説明をします。また、全社員が閲覧可能な場所に、定例で説明したのと同じ内容を掲載し、全社員がいつでも閲覧できるように もしています。とくに就業規則は、長文で掲載しても誰も読まないので、変更点やその背景について切り出して、端的にお伝えするようにしています。そのうえで、やや旧式ですが掲載内容を確認した人にはハンコを押してもらい、社員に情報が行き渡ったことが把握できるようにもしました。

また、私から直接、特定の社員の働き方について「もっとこうした方がいいのでは」と提案をすることもあります。

人事労務担当者として、タイムカードのチェックや給与計算をおこなっており、社員一人一人の具体的な働き方について把握している立場でもあります。「この社員はいつも朝早く来ているので始業を早くして、そのぶん早く帰れるようにしたほうが良いのではないか」「この人はお子さまの送り迎えでいつもギリギリに来ているので、始業を遅らせたほうが良いのではないか」など、思いついたことを社員やその上司に直接相談をします。

柔軟な働き方を認めることで、社員にとって都合の良い働き方をしてもらえるようになりますし、会社としても無駄な残業代の発生を防ぐことにつながります。両者に都合の良い提案ですが、なかなか現場から上がってくるものではありません。私からトップダウン的に提案をすることで、「本当はそうした方がいいと思っていました…」といった本音が見えてくることも多いです。関係者と擦り合わせつつではありますが、社員それぞれが働くことも休むことも堂々とできる環境づくりを目指しています。

社員が健康で、長く働ける会社へ

取り組みをはじめて、会社にどのような影響があったのかを教えてください。

泉さん:障がい者雇用に関しては、法定雇用率の達成はもちろん、入れ替わりが激しいとされる分野ではありますが、同じ方に4年以上継続で働いてもらえています。健康づくりの推進に関しては、社員の健康への意識が高まり、健康診断の結果が年々よくなってきています。

総じて、さまざまな取り組みの結果として、勤続歴の長い社員が辞めなくなったと感じています。とくに女性の定着率が高く、社員の平均年齢は男性より女性の方が高いです。

自動車業界、営業職メインの会社だと、比較的女性からの人気は低い傾向がありますが、三ツ葉パーツの場合は女性比率が高いです。ほとんどの方が既婚者で子どももいますが、長く勤めてくれる人が多く、働きやすい会社と感じてもらえているのかなと思っています。少子化の影響で社会全体として求職者が減っているなか、長く働いてもらえるための環境づくりは会社にとって重要だと考えています。

働きやすい職場づくりに関して、今後の展望を教えてください。

泉さん:ストレスチェックやエンゲージメント計測を始め、肉体系な健康状態だけでなく、精神面の状態も見える化したいと考えています。そのうえで、理想的なコミュニケーションのあり方を模索し、オフィスレイアウトといった細かい環境づくりにも取り組めればと思っています。万が一、精神的にバランスを崩してしまう人が出てしまっても、回復し、元気に働けるようなサポートができるようにしたいです。

また、高齢者雇用も積極的に実施したいと考えています。仕事の処理能力は若い人に比べると、どうしても劣る部分があるかもしれません。しかし、人生経験が豊富なぶん若い人にはできない対応ができます。各営業所の雰囲気をやわらげ、癒しを与えてくれる存在でもあります。人間関係におけるクッション的な役割を担ってもらえると感じています。

最終的には、三ツ葉パーツで働く社員全員が楽しく働き、私よりも会社に誇りを持っている、そんな職場にしたいです。

企業情報

株式会社三ツ葉パーツ

1972年創業。新潟市に本社を構え、自動車部品の卸売業を営む。新潟県内に9カ所の営業所を構え従業員数は110名(2023年時点)。